国際天文学連合(IAU)は、ギリシャ神話の名を実際の天体と地形に付けている。 これは古代の話ではない。土星の衛星テテュスのクレーターに オデュッセウスとペネロペとテレマコスが並んでいるのは偶然ではなく、 IAU が「ホメロス『オデュッセイア』の人物と場所から採る」と定めているからである。
ここは天文学が神話を説明したものではない。 天文学の命名の制度が神話の名をどう使ったか、という受容の記録。 日本語は IAU の由来記載の参考訳で、神話の解説として書かれた文ではない。
衛星は天体そのもの、地形はその上の場所。数えているものが違うので足さない。
IAU の命名テーマ ホメロス『オデュッセイア』の人物と場所 土星の衛星テテュスのクレーターがオデュッセイアの登場人物ばかりなのは偶然ではない。オデュッセウス・ペネロペ・テレマコス・キルケ・ポリュペモスが同じ一つの衛星の上に並んでいる People and places from Homer's Odyssey
ペレウスとテティスの子。トロイアにおけるミュルミドン勢の将。
IAU 承認 Apr 28, 2008
アキレウスに次ぐギリシャの英雄。
IAU 承認 1982
「アキレウスに次ぐ」はテラモンの子アイアスの決まり文句。オイレウスの子ではないと判断した
キルケの兄弟。
IAU 承認 Apr 28, 2008
パイエケスの王。アレテの夫、ナウシカアの父。
IAU 承認 Apr 28, 2008
オデュッセウスの母。
IAU 承認 1982
求婚者たちの首領。オデュッセウスに討たれた。
IAU 承認 1982
テュデウスの子、アルゴスの王。
IAU 承認 Apr 28, 2008
忠実な豚飼い。オデュッセウスを迎え、暖かい外套を与え、館へ導いた。
IAU 承認 1982
オデュッセウスの忠実な老乳母。
IAU 承認 1982
ペネロペの父。
IAU 承認 Apr 28, 2008
オデュッセウスの仲間を豚に変えた。
IAU 承認 1982
オデュッセウスの父。
IAU 承認 1982
アルキノオスの娘。オデュッセウスに助言した。
IAU 承認 1982
賢い老王。
IAU 承認 1982
由来記載は「賢い老王」とだけ言う。テテュスのクレーターは『オデュッセイア』の人物から採る規則なので、ピュロスのネストルと判断した
『オデュッセイア』の主人公。
IAU 承認 1982
オデュッセウスの貞節な妻。
IAU 承認 1982
オデュッセウスと戦ったキュクロプス。
IAU 承認 1982
クロノスの子、ゼウスの兄弟、海の神。
IAU 承認 Apr 28, 2008
老いた予言者。オデュッセウスが死者たちのあいだで教えを乞う。
IAU 承認 1982
オデュッセウスの子。
IAU 承認 1982
ティタンの一人。天を肩に担いだ。
発見 October 1980 Voyager Science Team
百本の腕を持つギリシャの巨人。神々はブリアレオスと呼んだ。
発見 August 15, 2008 Cassini Imaging Science Team
ディオネはクロノスの姉妹で、ゼウスとのあいだにアフロディーテを産んだ。
発見 March 21, 1684 G.D. Cassini
**IAU の記載はこのサイトと違う伝えを採っている。** IAU はディオネをクロノスの姉妹(ティタン女神)とし、ゼウスとのあいだにアフロディーテを産んだとする。このデータはディオネをオケアノスの娘とし、アフロディーテはウラノスの泡から生まれたとしている。古代の資料が割れている箇所
J・ファウンテンとS・ラーソンが、ヤヌスの検出を混乱させているものとして最初にその存在を疑った。二人は正しい公転周期を割り出し、この衛星は1980年にようやく確認された。ティタンのイアペトスの子にちなんで命名。先を見通す兄弟プロメテウスとは対照的に、彼は「あとになって」自分が誤っていたと悟った。
発見 1977 (Fountain and Larson), February 26, 1980 (Cruikshank) J. Fountain and S. Larson (1977), D. Cruikshank (1980)
この衛星はもう一つの衛星ヤヌスと軌道を入れ替える。発見当初は二つを一つと取り違えていた、と由来記載自身が述べている
クロノスの孫娘。その美しさがトロイア戦争の引き金になった。
発見 March 1, 1980 P. Laques and J. Lecacheux
ラッセルがティタンの一人にちなんで命名した。
発見 September 16, 1848 W.C. Bond and G.P. Bond; independently discovered September 18, 1848 at Liverpool by W. Lassell
ジョン・ハーシェルがティタンの一人にちなんで命名した。
発見 October 25, 1671 G.D. Cassini
ティタンのオケアノスとテテュスの娘。オデュッセウスの情人。
発見 March 13, 1980 D. Pascu, P.K. Seidelmann, W. Baum, and D. Currie
ピカリングがティタン女神の一人にちなんで命名した。
発見 August 16, 1898 W.H. Pickering
カストルの双子の兄弟。ゼウスとレダの子。
発見 October 21, 2004 Cassini Imaging Science Team
ティタンのイアペトスの子。アトラスとエピメテウスの兄弟。火をはじめ、多くの贈り物を人間に与えた。
発見 October 1980 Voyager Science Team
ティタン女神。クロノスとのあいだにゼウスを産んだ。
発見 December 23, 1672 G.D. Cassini
カッシーニは自分が見つけた四つの衛星(テテュス・ディオネ・レア・イアペトス)をルイ14世にちなんで名づけようとした。しかし今日使われている名は19世紀初めにジョン・ハーシェルが付けたもので、サトゥルヌスの兄弟姉妹であるティタン神族とティタン女神から採られている。テテュスはオケアノスの妻で、すべての河とオケアニスの母である。
発見 March 21, 1684 G.D. Cassini
ゼウスとテミスの娘、平和の女神。
発見 February 6, 2003 S. S. Sheppard, D. C. Jewitt, and J. Kleyna
白鳥の姿のゼウスに誘惑され、ポリュデウケスとヘレネを産んだ。
発見 September 11, 1974 C.T. Kowal
ゼウスの最初の妻。身ごもったところをゼウスに呑み込まれ、のちにアテナがゼウスの額から生まれた。
発見 March 4, 1979 Voyager Science Team
クレタの王ミノスの妻。ゼウスが牡牛の姿で近づき、彼女はミノタウロスを産んだ。(綴りは2009年7月に Pasiphaë から Pasiphae へ変更)
発見 January 27, 1908 P.J. Melotte
ギリシャ神話で、蛇の体と九つの頭を持ち、冥界を守った恐ろしい怪物。
発見 May 15, 2005 H.A. Weaver, S.A. Stern, M.J. Mutchler, A.J. Steffl, M.W. Buie, W.J. Merline, J.R. Spencer, E.F. Young, and L.A. Young
ギリシャ神話で、冥界の入口を守った多頭の犬。
発見 June 28, 2011 M.R. Showalter, D.P. Hamilton, S.A. Stern, H.A. Weaver, A.J. Steffl, and L.A. Young
闇と夜の女神。カロンの母。(Nix はギリシャ名 Nyx のエジプト式綴り)
発見 May 15, 2005 H.A. Weaver, S.A. Stern, M.J. Mutchler, A.J. Steffl, M.W. Buie, W.J. Merline, J.R. Spencer, E.F. Young, and L.A. Young
冥王星の衛星の綴りが Nyx でなく Nix なのは、IAU の記録によればエジプト式の綴りを採ったため
同じくステュクスという名の冥界の川を支配したギリシャの女神。
発見 June 26, 2012 M.R. Showalter, H.A. Weaver, S.A. Stern, A.J. Steffl, M.W. Buie, W.J. Merline, M.J. Mutchler, R. Soummer, and H.B. Throop
ギリシャ神話のティタン。
IAU 承認 1935
ギリシャ神話の人物。
IAU 承認 1970
由来記載は「ギリシャ神話の人物」としか言っておらず、どの人物かを名指ししていない。同名の別人が知られていないことから、迷宮を造ったダイダロスと判断した
ギリシャ神話の英雄ヘラクレスのラテン語綴り。
IAU 承認 1935
IAU の命名テーマ 神話・伝説に出てくる、恋にまつわる名前 Mythological and legendary names of an erotic nature
ギリシャ神話の歌い手にして楽人。愛するエウリュディケを冥界から連れ帰ることに失敗する。
IAU 承認 2003
ギリシャ神話の月の女神。エンデュミオンの恋人。
IAU 承認 2003
IAU の命名テーマ スキアパレッリとアントニアディが付けた古典神話の名 望遠鏡で見える明暗の模様に、19〜20世紀の天文学者が神話の名を付けた。探査機以前の命名がそのまま残っている Names from classical mythology assigned by Schiaparelli and Antoniadi
三つの頭を持つ犬。冥界の門を守った。
IAU 承認 1958
冥界をめぐる大河。魂は地上からの旅路でこれを渡らねばならない。
IAU 承認 1958
IAU の命名テーマ ポイベにゆかりの人物、およびアポロニオス・ロディオスとウァレリウス・フラックスがそれぞれ著した『アルゴナウティカ』の登場人物 People associated with Phoebe, people from the Argonautica by Apollonius Rhodius and Valerius Flaccus
アルゴナウテスの一人。アイアコスの子、アキレウスの父。
IAU 承認 2006
アルゴナウテスの一人。アイアコスの子。カリュドンの猪狩りに加わった。
IAU 承認 2006
IAU の命名テーマ アマルテイアの神話にゆかりの人物と場所 People and places associated with the Amalthea myth
ギリシャの母なる大地の女神。ゼウスをクレタへ連れていった。
IAU 承認 1979
IAU の命名テーマ 神話の鳥と鳥に似た生き物、およびそれにゆかりの場所 Birds and bird-like creatures in mythology, and the places associated with them
ギリシャ神話の翼のある馬。
IAU 承認 Dec 18, 2020
IAU の命名テーマ カストルとポリュデウケス(双子)の神話の人物 People from myth of Castor and Pollux (twins)
ポリュデウケスのラテン名。カストルの双子。
IAU 承認 1982
IAU の命名テーマ 太陽と月の神々 ヒュペリオン自身が太陽神ヘリオスの父。その衛星のクレーターに息子の名が付いている Sun and Moon deities
ギリシャの太陽神。ヒュペリオンの子。
IAU 承認 1982
父ヒュペリオンの名を持つ衛星の上に、息子ヘリオスのクレーターがある
IAU の命名テーマ 火・太陽・雷・火山の神々と英雄 イオは太陽系でもっとも火山活動が激しい天体。噴出口にプロメテウスの名が付いている Fire, sun, thunder, and volcano gods and heroes
ギリシャの火の神。
IAU 承認 1979
イオの噴出口。太陽系でもっとも火山活動が激しい天体に、火をもたらした者の名が付いている
IAU の命名テーマ カストルとポリュデウケス(双子)の神話の人物 土星の衛星ヤヌスとエピメテウスは互いに軌道を入れ替える二つの衛星で、どちらの地形にも双子カストルとポリュデウケスの神話の人物の名が付く People from myth of Castor and Pollux (twins)
ディオスクロイの一人。馬を馴らす者として名高い。
IAU 承認 1982
綴りの一致は証拠にならない。候補に挙がったのに、IAU の由来記載を読んで外したもの。外した判断のほうが、この頁の中身である。
由来文が「神々はブリアレオスと呼んだ」と明記している。百手巨人のアイガイオン(=ブリアレオス)であって、テセウスの父アイゲウスではない。ブリアレオスの側に手で足した
Greek hundred-armed giant, called Briareus by the gods.
由来文は「アルテミスに仕えたもう一人のニュンフで、ゼウスに誘惑された」。マイラという別の人物であって、運命の三女神モイライではない。骨格の一致だけで拾ってしまったもの
Greek; another nymph of Artemis seduced by Zeus.
由来文は「レウキッポスの娘」。ディオスクロイに攫われたレウキッピデスの一人であって、ティタン女神ポイベではない。ヤヌスのクレーターはカストルとポリュデウケスの神話から採る規則なので、この読みで合っている
Daughter of Leukippos.
テテュス(ティタン女神)とテティス(アキレウスの母)を、綴りの骨格が潰してしまった。由来文は「オケアノスの妻」と明記しており、前者である
Cassini wished to name Tethys and the other three satellites that he discovered (Dione, Rhea, and Iapetus) for Louis XIV. However, the names used today for these satellites were applied in the early 19th century by John Herschel, who named them for Titans and Titanesses, brothers and sisters of Saturn. Tethys was the wife of Oceanus and mother of all rivers and Oceanids.
由来文は「アレクサンドリアのメネラオス。ギリシャの幾何学者・天文学者(後98年ごろ)」。トロイアのメネラオスではない。**綴りは完全に一致している**
Of Alexandria; Greek geometer, astronomer (c. A.D. 98).
由来文は「ギリシャの女性の名」。金星の20km未満のクレーターは、ありふれた女性の名から採る規則になっている。女神・王女への献名ではない
Greek first name.
由来文は「ギリシャの女性の名」。女神への献名とは書かれていない
Greek female first name.
由来文は「ギリシャの女性の名」。ムーサの一柱クレイオへの献名ではない
Greek first name.
由来文は「ギリシャに由来する名前」。英語の女性名 Grace であって、カリス三女神への献名ではない
First name from Greek.
由来文は「ギリシャに由来する名前」。金星のクレーターの規則どおり、女性名としての Irene
First name from Greek.
由来文は「イカロスが住んでいた地(クレタ)」。地名であり、しかも指しているのはペネロペの父イカリオスではなく、翼で飛んだイカロス
Land where Icarus lived (Crete).
由来文は「ナイル川のエチオピアの島。いまのアトバル」。地名であって人物ではない
Ethiopian island on Nile; now Atbar.
由来文は「アポロ計画にちなんで命名」。IAU の記録は神アポロンへの献名だとは書いていない。計画の名の由来までは、この資料では辿れない
Named to honor Apollo missions.